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卒業設計審査会2024sについて

nobusato

名城大学卒業設計審査会2024s おしまい。

こっちは長文バージョン。


なんだかんだ、年間の一大行事。

企画から提案までを全て自分の責任でやりきり他の人の心に響かせる卒業制作は4年間の集大成。どこか夢見心地でも良いが、昨今はリアリティも大切。現在や未来にリアリティを持って接続し、それでいてアンビルドの夢物語でもある。

そんな未来アリだよな。

今の社会にこんなのがあったらな。

って思える作品で力強く宣言できたら最高。

一方、伴奏する我々教員陣にとってもなかなかヘビー。

朝から建築家の皆さんを集めて1年を振り返り次年度を展望する会議をし、午後4時間かけて全員の作品をポスターセッション。

そこから総勢23名で議論しながら順をつけていく。

しかも全部司会。

方々への配慮を忘れず、時に情熱的に、それでいてフェアに。

できるだけ傷付けず、鼓舞する。

そして、懇親会でめっちゃ飲む。

懇親会は、学生作品について語り合うのはもちろん、

教員同士の戒めにもなる。


さて、本題。

今年の卒制は、建築家の方からしたら、

「悪い意味で選ぶのが難しかった」

「全体に低調」という意見が並ぶ。

個人的な感触としては、

「誰が取るのかわからないな。」

「平均以上で学外評価でも進出しそうな作品がちらほら」。

飲み会で近くの先生に聞くと、

「突出した作品がない。」

「決して悪くはない」と。

ふむふむ。

どれもみんな正直な意見なのだろう。

「心踊るような卓越した作品はない。また、やりきっているようなものも少ない。でも、平均以上にはやれている作品が多く、順位をつけるのは難しい。」かな。

歩いてみた印象としては、

おっ、と思う模型も多く、楽しい。でも、一昨年のような、どこを歩いていてもワクワクするような高揚感は弱く、昨年のようなデカイ模型がたくさんある迫力もない。

でも、表現か内容のどっちかに特化したものがたくさんあった。要は、まだまだ伸び代いっぱい。話を聞いて理解できると、旨みがじわっと出てくる感じ。

審査自体も同じ様相で続く。

名城に来てから初めてくらい、1次審査の得票が割れる。

23人で37人を評価していて、11票がトップで2人、10票がついで2人、...と、過半数をゲットしない、僅差の得票が団子状態で20作くらい並ぶ。

全作品のコメントをしながら議論を進める。特に、上位の作品については、推しの作品を語る形で講評を続ける。最後に僕もちょっと熱いコメントをしてしまう。フェアな司会を目指していたのに、この日最大の失態。上位なのに推しが少ないものも見られ、やや開くかな?という感触も得たところで第2次投票。

2次投票の結果、団子は半分の8くらいになり、どうにか順位が出せそうな感じに。ここで、建築家からの推しのコメントを受けて学生が演説。いろんな思いを聞いた上で最終投票。


最優秀賞

石川くん:でかやま物語り ー出会いの一本杉に連なる小さな建築ー

→能登の復興ボランティアに行き、自分にできることを考え、でか山をモチーフにした家具を製作。材木屋にプレゼンし資材提供を受けた上で現地ワークショップで実際に製作をし、現地のお店に寄贈。卒制や建築家というものへの審査側の態度を問うものでもあった。


優秀賞

・伴くん:マチの筏 -製材所拡張から始まる綱場の未来-

→木材が集積した綱場としての歴史をもつ街を、製材所を基盤に街に木材が溢れる街として再編する計画。木取りの設計、精巧な1/20の製材所再生計画、街に広がる木を蓄積する設計、という段階的なトータルデザインが評価された。


・藤原くん:にぎわいの余白 -遊休農地を取り巻く卸売市場再構築計画-

→市場を開くもの。ダイナミックな詳細模型と、広域の全体計画のどちらも提案。穴がなく、トータルの完成度の高さが評価された。


アーキテクト賞

・本杉さん:簗漁の継承者 -巨大な簗建築で紡ぐ未来-

→やな漁という川の漁における竹材利用に着目し、竹で作る意味のない、意味のありそうな空間を制作。造形の美しさが際立つ。


計画系奨励賞

・澤田さん:都市の鼓動 -都市信仰が宿る働く場-

→都市というものをポジティブに資本と人の熱気が集積した魅力的なものとし、そこで働くことを肯定的に捉える「都市信仰」をベースに建築を作るという提案。クセがすごい。でも、模型完成度と設計精度がすごい。


評価は割れに割れたけど、結果は妥当なものだったように思う。

正解を探すのではなく、自分と向き合った提案が最優秀になったのは、とても良かったと思う。


さて、うちの研究室について。

今年の指導は、ちょっとやり方を変えてみた。

先を読んで、できることを想像して指導するのではなく、みんながやりたいことを聞いて、寄り添う。

とにかく話を聞く。

朝から17:00までずっと卒制エスキスで、各人が3周くらいする卒制ブーストデイ、なるものを月に1回やってみる。そして、とにかく、提案を一緒に考えてあげる。でも、前を走らないように注意しながら。教える、というよりもあくまでミーティング。

そうすると、一緒に考えることになり、楽しかった。

でも、寄り添うなんて言っているとただのいいやつみたいだけど、ちゃんと締め切りは提示する。10月、11月、12月と、なかなか進まない時期は、俺以外の人に見てもらう機会を作る。そうすると、自分からプレッシャーを与えなくていいからとても良い。特に、案がまだ育っていない段階で見てくれたOBOGのみんな、ありがとう。


指導としては弱くなる方法だなぁ、という側面もあるし、最初に先読みした方が提案の伸び代はあるのかもしれない。一緒の船に乗るから客観的に見れなくなるという弱点もある。

でもまぁ、それでいいか、と。


卒制は、できてもいいし、できなくてもいい。

大切なのは、できた自分やできない自分と向き合うこと。

そして、自分の適性を見定めること。

隣で、あーでもないこーでもないと一緒にできないことを笑って、できることに驚く。そうすると、そんなに悲観しないで自分を見つめられるのかもしれない。


佐藤研究室は、学内の結果は本当にどうでもいい。みんな仲間なのに競ってどうするんだ、と。学外では勝負してほしいけど。なぜなら、地方私立だと、学外の最前線と競う機会自体がないから。でもまぁ、ひとまず、学内の結果では、上記の伴くんと澤田さんはうちの学生。真摯なテーマと変なテーマで良い。


優秀の伴くんは全く話を聞かない人だったのにこの1年ですごく変わった。多くの失敗が彼を成長させたのなら、学生時代の失敗なんて安いもんだ。

計画系奨励賞の澤田さんも、最初はほんと会話ができなかった。でも最後には、毎週のエスキスが楽しみなくらいたくさん会話した。

それ以外も、みんな、新しい挑戦をしてくれた。タイトルと写真だけ。みんなめっちゃおもろかった。


卒制は、個人が主の、でも研究室全員で取り組むプロジェクト。

今年は、4年の仲間感が強く、きちんと3年がサポートして、 1・2年生も一緒に取り組んでいた。そして修士はきちんと引いて見守ってあげてた。

我々は良いチームだ。


・マチの筏 -製材所拡張から始まる綱場の未来- :優秀賞

製材所は問題山積み。でも、製材の仕方と場の可能性で継承される未来は描けるのかもしれない。


・都市の鼓動 -都市信仰が宿る働く場-:計画系奨励賞

都市をポジティブに捉える提案。宗教や慣習は科学の逆なのだけど、科学が生み出した都市を宗教的に捉えると、もっと多くの人の心は楽になるのかもしれない。


・まちおや -「ポケる」で増やす子育ての仲間入り-:構造系奨励賞

とにかく構造を考えろ。と最後に話したことが花開く。でもそんなことよりも、親以外が子育てに参加する方法がないという気づきと、チロルの建築化というプログラムが良い。


・地球に根を下ろすために。 タイトルたまらん。そして後の断面模型もカッケー。制作期間中にずっと育てていたコーヒーコンポストも世界観を示していて良い。この提案も超面白かった。表現の仕方って難しい。


・「ワーカーズプレイス」 -人生を楽しく過ごすための新たな居場所- このスケッチと平面と断面のセット、サイコー。超かわいい。図面と断面がどれだけ大事かを教えてくれル。何も書いていなくてもわかる。絵本みたい。ほんとみんな真似してほしい。


・使いこなすマチゴトビト -地域住民が広げる風景-

人々が身の回りの利用権を手にしていく提案。街には人が自由に振る舞える空間が少なすぎる。ありものの町のコンテンツで場を設えることで、まちの維持管理・保善する場を養う。


・ひとつづき -オフィスビルと道の関係を問い直す-

オフィス街には食という環境があまりにも少なすぎる。働く体制を整えるにはまず職から見直さないといけないのに、フレッシュなものや笑顔で食べる場がない。だったら作ろうと。胃袋から健康を考える。


・まちを誇る -参道的設計手法によるシンボルとデザインの提案ー

都市計画との戦い。周囲の氏子を鼓舞することで、文化を取り戻すためのささやかな抵抗を実現しようという挑戦。


・複数資本BASE

めちゃくちゃ面白い。資本というと金融資本を思いがちだけど、それ以外にもたくさん資本はある。その1つ1つと出会い、向き合える新たな場の提案。


 
 
 

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