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現代のリノベーションの真正性を考える

更新日:2020年1月1日


今年度からは大学院も教えています。

篠原一男、坂本一成、アトリエ・ワンと続く師の教えを名城大で伝えている作家論をベースにしていますが、

世界遺産時代のキーフレーズ、真正性(authentisity)を題材に、リノベーションの真正性を考える、というお題も出してみました。

対象としているのは、2015年2月号からの4年間の住宅特集のリノベ特集。

わかってきたことは、

建築作品として発表されるリノベ作品は、

設える、とか、綺麗にする。

とは違うことをしているということ。

壁でいうと大壁ではなく真壁が持つ意味のような作品が多い。つまり、時代の経年変化を隠さない。

対象の種類によっていくらかの段階が見られた。

1. 建物のそのものに歴史的強度があるもの

この場合、建物の力強さを前面に押し出し、丁寧に過去から現在に至る軌跡を表現している。

2. 建物そのものはそこまで強い歴史的強度はないが、素材の一つ一つに強度があるもの

梁や骨組みに価値を見出すのがこのパタン。篠原一男は黒々とした梁が日本古来の概念を表現している訳ではない、と仰っていますが、一方で、建築の部材がもつ力も確か。そこを強化した提案は一定層存在していた。

3. 建物そのものではなく、社会的ストックとしての位置付けに価値を見出すもの

例えば、大量に生産されたある時代のアパートや集合住宅など。もしくは町工場の住宅への転用など。それらを適正に使っていくことは、現代の建築文化にとってとても大切なこと。ある種の汎用性を伴った表現で作品としての強度を高めているのがこのパタン。ストックやインフラとしての建築から暮らしの場としての復権を示唆するものも多い

4. その建築を取り巻く周辺環境に価値を見出し、温熱や快適性を重視するもの

緑に隣接する場所だったら緑の価値を強化する。日射が入りすぎる設計だったら日射を適正にするリノベを施す。新築の建築設計に近いロジックで場を設えているような設計。

5. 居住者のライフスタイルに合わせて住環境を設えるもの

ライフステージの変化や、所有者の変更、社会的要請の変化などに適応して住環境を設えているもの。この場合、ストックとしての価値より現代の生活様式に適応した建築として建物を再定義していくような傾向にある。

6. 建物の価値を継承するのではなく、ハコとしての建築と、その中で作品として表現すること これは、空間的価値に乏しいありきたりの場を、これまでと全く異なる素材や空間を挿入することで、作品としての強度を持たせるというもの。

こんな感じでツリー状に作品の傾向があると分析しました。

建物が持つ価値に合わせて、表現の方向性が変わるのだな、という感触。

さてさて、本題の真正性。

それは、過去から現代、そして未来に至るまでの線としての建築文化を意識することではないか。

単純に美しい空間を設えることは、現代のリノベーションとして、確かに否定はできない。一方で、それは極めてファッション的であり文化ではない。だからこそリノベーションの真正性は、嘘偽りなく、建築の記憶を伝えることにあると考えている。結果として、現代作品としての完結性を伴わないことも重要。

建築の価値と、建築家作品としての強度。

それらを理解・整理した上で、自分なりに色々と表現していければと思います。

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